農縁くらし

環境の邪魔にならない程度の距離で無農薬無肥料栽培を目指す「からふる亭」の日常(´▽`)

有機農業の研修受け入れ指導体制の拡充をめざす実務者研修会 平成30年10月5日(金)

  1. 儲かる有機農業とは?セルロースを制したものが有機農業を制する
    (株)ジャパンバイオファーム代表取締役、(社)日本有機農業普及協会(JOFA)代表理事 小祝政明氏
     有機農業は、肥料が少ないので収穫が少ないが、高付加価値がついて高く売ることが出来ると一般的に言われている。しかし、実際は、価格を上げられても20%程度で、大幅に価格を上げることはできない。さらに、有機農業では除草や除虫の手間が増えるため、人件費を考えると利益が少ない場合もある。ただ、それは、化学肥料の代わりに有機肥料を使えば有機農業と表現している、有機農業に対する農業者の誤解に起因している。自然のメカニズムを読み解き、植物生理や土壌成分に着目し、有機農業を行えば、高品質・高栄養価・多収穫。安定生産を実現することができる。その栽培理論をBLOF(Bio Logical Farming・生態系調和型農業)理論と呼んでいる。BLOF理論を実践する栽培農家の収量や野菜の特徴などは、次のようになっている。
    ニンジン・・・慣行栽培収穫量3.5t/反に対し、BLOF理論栽培収穫量15t/反
    ニンジンの形も一般的な三角錐ではなく、円柱に近くなる。
    キュウリ・・・一般的には1花房に1個結実するのに対し、BLOF理論栽培では1花房に6個結実。
    トマト・・・一般的には1花房に4~8個結実するのに対し、BLOF理論栽培では1花房に12~16個結実。
     BLOF理論栽培の圃場の土はフカフカで、2Mほどの細い棒がスルスルと土に突き刺さっていく。これは、果樹園でも同じように、棒が土に突き刺さっていく。普通の圃場では、耕運機で耕しても、耕した土の下に硬盤層があるので20~30cmしか棒を挿すことは出来ない。さらに、その野菜の栄養価は格段に高く、糖度も高い上に、エグ味や苦みの原因である植物体内の硝酸態窒素の量が極めて低い。そして、BLOF理論で栽培された野菜に関して、専門家に調査を依頼したところ、植物体内で生産されている栄養分の状態などから光合成能力が他の農法に比べて2倍程度高いということが判明した。
     BLOF理論栽培の特徴
     ①光合成が盛んに行われ、収穫量と栄養価が増える。
     ②虫が少なく、草も生えにくい。農薬など使う必要がない。

     当初、私は講義を聞きながら、あまりに現実とかけ離れた夢のような話に少々疑念を持ってしまったが、このあとの講義を聞いて納得した。

     BLOF理論のポイントは、太陽熱養生処理、炭水化物、アミノ酸

 まず、土壌分析を行い、土壌に必要成分を知り、不足しているものを補うよう施肥設計を行う。その後、太陽熱養生処理を行う。その手順は、施肥設計に合うように中熟堆肥、ミネラル、水分と微生物(納豆菌、乳酸菌、光合成細菌など)を圃場に撒き、耕運畝立て、畝の中央に灌水チューブを敷き、透明マルチで畝を覆う。特に最初の1週間に中熟堆肥が分解され、大量の二酸化炭素が放出されるので、マルチに穴が開いていないか注意が必要。毎日観察し、表面が乾いてきたら、灌水し、積算温度が900度になるまで、待つ。日数の目安は夏で大体1カ月程度。養生処理に成功すると、素人でも長い棒を80cm以上畝に挿すことができる。私も2年前に太陽熱養生処理を行ったことがあるが、理論も良く分からない状況で、説明されたまま作業してみても棒を50cm以上挿すことができた。しかも、土は団粒構造が形成され、その後マルチ無しで野菜を植えても草はまったく生えず、病気も出なかった。
 このように長い棒が挿せるのは、硬盤層が破壊され、土の奥深くまで団粒構造が形成されているためだ。BLOF理論では、この仕組みのことを「コールドビールシステム」と呼んでいる。堆肥などの有機物が土壌の菌類により分解されて水溶性炭水化物(糖、アルコールなど)になり、それが土中に染み込んでいく。そして、嫌気的な環境の中で酵母菌などによるアルコール発酵で水溶性炭水化物がアルコールと二酸化炭素になり、このとき発生する二酸化炭素の膨張力によって、土の塊を分解していく。夜になると冷えて、昼間に二酸化炭素が抜けて行った隙間を伝って、新鮮な空気が土壌の深くまで入り込み。土壌は冷やされて、収縮する。このとき、酸素がある状態で活発になる納豆菌が分泌するネバネバ物質が分解した有機物、微生物菌体、死体、粘土粒子などがくっつきあって団粒構造を形成する。この膨張と収縮が繰り返されるため、長い間フカフカの土壌が維持される。そして、このような作用が下へ下へと進み、団粒構造がつくられていく。
 土中では糖が分解されると、エタノールを経て、酢酸になる。あくまで計算上では、大体1反当たり1tの中熟堆肥(うちセルロースが540kgあるとする)を入れれば、134,400Lの二酸化炭素が発生し、透明マルチ内に封じ込められ、硬盤層を押し壊す。酢酸は、360kg生成される。
 太陽熱養生処理を実施する目的としては、1)土壌物理性の改善(土壌の団粒化、硬盤層の破壊、水はけの改良)、2)病原菌を熱で死滅させる、3)草の種を熱で死滅させる(雑草の抑制)の3つと言われているが、BLOF理論では4番目の効果があると考えられている。それは、4)カルボン酸が生成されることだ。中熟堆肥を酵母菌などが分解し、糖→アルコール→酢酸、乳酸などのカルボン酸を生成する。これらの酸は、土中のミネラル分と結合し、ミネラルを野菜が吸収しやすい状態、固体から液体に変化させる作用があり、植物のミネラル吸収を助ける効果がある。

 次に、炭水化物の施肥。
 植物の体は、セルロースというブドウ糖が直鎖状に重合した繊維で出来ており、セルロースは炭水化物であり、ビタミン類、葉の表面のワックス(油脂)も炭水化物。いずれも光合成によって得られたブドウ糖とエネルギーを材料に植物の体内で生成される。そこで、今までは肥料で植物に養分を与え、光合成が促進されるように働きかけていた。
 しかし、最近の研究から、植物は炭水化物(ブドウ糖、カルボン酸、アルコールなど。)を根から直接吸収できることが明らかになった。本来なら葉で、次のような長い反応経路を経て、ブドウ糖を生成する。葉の葉緑体で光エネルギーを電気エネルギーに変換し、水(H2O)を分解し、水素(H2)と酸素(O2)を生成、生成された酸素は気孔から体外へ出て行き、残った水素(H+)に二酸化炭素(CO2)を反応させ、呼吸などで得られたエネルギーを使い、炭水化物(ぶどう糖C6H12O6)を生成する。
 しかし、炭水化物を施肥すると、この経路を短縮することができ、根から直接吸い上げられた炭水化物は、ブドウ糖生成の材料に使うことができるので、1~3つの反応を飛ばして、ブドウ糖を生成することができ、植物のエネルギー節約になる。特に、酢酸は、2分子あればブドウ糖を生成することが可能な上、さきほど書いたように、酢酸が土のミネラルを、固体から植物が吸収しやすい水溶液に変換するので、例えばカルシウムと酢酸が反応してできた酢酸カルシウム・(CH3COO)2Caを植物が取り込めば、カルシウムの作用で植物細胞膜生成強化や根の育成が促進され、カルボン酸からブドウ糖生成の両方を効率よく行うことが可能となる。さらに昨年、酢酸を施用することで、傷害応答に働く植物ホルモンであるジャスモン酸が合成され、植物が干ばつに強くなることが論文で発表された。太陽熱養生処理でできた酢酸(カルボン酸)は、植物にとって大変有用である。

このように炭水化物が豊富になると、植物体を強化する植物繊維、根酸、収穫物の栄養(でんぷん、糖、有機酸、抗酸化物質)に利用できるため、病害虫に抵抗できる強い体になり、高品質・多収穫が実現できる。
 最後にアミノ酸肥料の施用。アミノ酸は植物の細胞(タンパク質)を作るのに使われ、根から吸収した窒素分(N・硝酸態、亜硝酸アンモニア態など)は、アンモニア態窒素に還元され、光合成によって生成された炭水化物を分解してエネルギーを作り、植物体内でグルタミンを合成する。グルタミンから各種アミノ酸を合成し、タンパク質を経て、細胞になる。アミノ酸を直接施用することで、炭水化物の消費が抑えられ、節約された炭水化物は他の機能へ使われ、植物が強くなる。
以上よりBLOF理論栽培の特徴をまとめると、
 ①光合成が盛んに行われ、収穫量と栄養価が増える。
 葉の光合成に加えて、根から炭水化物とアミノ酸を吸収することで、根でも擬似的光合成を行っている。さらに、カルボン酸の存在により、ミネラルも効率よく吸収することができ、葉の光合成、野菜の成長や細胞分裂、根の伸長などが促進される。
 ②虫が少なく、草も生えにくい。農薬など使わなくても育成可能。
 太陽熱養生処理により、土中の草の種、虫や病原菌が駆逐される。根からの炭水化物やアミノ酸を吸収することで野菜のセルロースや栄養価が強化され、野菜が傷つきにくい。肥料が過多だと葉が柔らかくなり、野菜が傷つき虫を呼びよせてしまうが、BLOF理論栽培の野菜は傷つきにくいので、虫が寄って来ない。

  1. 山口BLOF研究会の2年間カリキュラム概要と全国事例
    株式会社JOAA 元木 雅人氏
    全国のBLOF理論栽培事例の紹介があった。
  2. 新規就農者の事例発表
    ぷくぷくファーム株式会社 代表取締役 白井智規氏
    かんたまさん 林洋輔氏
    みぃやん家のトマト フマ美里氏
    ミノルファーム 細田実氏
  3. 実践新規就農者のパネルディスカッション

 

講義を受けて、来年から、太陽熱養生処理しようかと考えていたので、色々と勉強になった。また平生町内、もしくは近郊市町で採れるものを利用し、太陽熱養生処理に用いて、資源を循環させていく仕組みを作っていきたい。