農縁くらし

環境の邪魔にならない程度の距離で農業と落語会を開催する「からふる亭」の日常(´▽`)

太陽熱養生処理技術普及セミナー

 

 生態系調和型農業理論(Bio Logical Farming)、通称BLOF理論と呼ばれ、堆肥・緑肥を使う有機栽培において高品質・多収穫・高栄養価を実現できる栽培技術。その中で、核となる技術が太陽熱養生処理で、土壌分析を行い、土壌に不足している肥料分、微量金属(ミネラル)などを特定し、それらと中熟堆肥を圃場に投入、耕起する。しっかりと水を散布し、透明マルチを掛け、マルチ内の土の深さ5cmの積算温度が900度までなれば、処理が完了する。処理が完了すると、作土層(根が張る場所で土壌表面から硬盤層までを指す)が大幅に増える。通常深さ10~30cm程度であるが、50~200cm以上まで作土層が増加する。その後、マルチをはぎ、作物を植え付ける。種子なども死滅しているので、除草の手間も省ける。

 

 太陽熱養生処理のメカニズム

 中熟堆肥には、セルロースたんぱく質が含まれている。土中には、様々な微生物がいるが、太陽熱養生処理で活躍するのが、納豆菌と酵母菌。まず、納豆菌が堆肥のセルロースを糖類(オリゴ糖ブドウ糖)へ、タンパク質をアミノ酸へ分解する。納豆菌は増殖力が旺盛(1個の納豆菌が16時間で40億個にも達する)で空間を埋め尽くすように増え、お互いに摩擦し、熱を生じさせ、土中の温度が上がり、カビなどの糸状菌、雑草の種子、昆虫をほぼ死滅させる。死滅した糸状菌は、納豆菌のエサになる。糸状菌がいなくなることで、代わりに放線菌が増える。放線菌は、昆虫の硬い殻の主成分であるキチンを溶かす酵素キチナーゼを持っているので、線虫や昆虫が棲みにくい環境になる。納豆菌のネバネバ成分・ポリグルタミン酸は、土の細かい粒子と粒子を繋げていき、団粒構造を作っていく。団粒構造は土壌粒子がばらばらに存在している単粒構造にくらべ,大小さまざまの孔隙(こうげき)に富み,通気・通水性,保水性にすぐれ,土壌生物の活動も盛んで,植物生育も良好になる。

次に酵母菌は、納豆菌が生成したブドウ糖酵母菌が分解し、アルコールと二酸化炭素を生成する。発生した二酸化炭素が、土の間を通過することで、土の粒子の間に適度な隙間ができ、土が柔らかくなる。さらに、日中は、太陽熱により、水は水蒸気になり、二酸化炭素も空気になり土は膨張する。逆に夜中は、水は液体になり、二酸化炭素はその水に溶け込む。それが土の硬盤層に滲み込んでいき、再び太陽熱で温められると気体になり、土の硬盤層を徐々に柔らかくしていく。その結果、作土層がどんどん広がっていく。本来、硬盤層以下の土には空気が入りにくいため、微生物は休眠状態にあるが、硬盤層が破壊され、空気、水、糖分、アミノ酸や納豆菌などの微生物が供給されることで微生物が再び活発になり、土壌の状態が良好になる。

最後に酵母菌が生成したアルコールは酢酸菌により分解され、酢酸になる。土の中には、納豆菌が生成したアミノ酸と炭水化物が豊富に存在することになり、植物は根から、アミノ酸、炭水化物(酢酸、アルコール)などを吸収できるので、光合成が行えない曇天でも、植物は健全に育っていく。

アミノ酸は植物の細胞(タンパク質)を作るのに使われる。化学肥料(硫酸アンモニウムなど)を施肥した場合、根から吸収した窒素分(N・硝酸態、亜硝酸アンモニア態など)は、アンモニア態窒素に還元され、光合成によって生成された炭水化物を分解してエネルギーを作り、植物体内でグルタミンを合成する。グルタミンから各種アミノ酸を合成し、タンパク質を経て、植物の細胞になる。

アミノ酸を根から直接吸収することで、炭水化物の消費が抑えられ、節約された炭水化物は他の機能へ使われる。さらに、炭水化物(酢酸、アルコール、糖類)を根から吸収することにより、植物体内に炭水化物が大量にあれば、デンプン、セルロース(植物の細胞壁、体を支える)、ビタミン、脂質(葉や実の皮のワックス成分など)、有機酸、エネルギーに変わり、植物の栄養価、糖度は上がり、実の着き具合が良くなり、根菜類は太くなり、多収量になる。

逆に、炭水化物が不足すると、植物の体を支える組織が軟弱になり、傷つきやすくなり、病害虫発生の原因になる。それに伴い、収量は下がる。炭水化物が不足する原因は、天候が悪く、光合成が行えない、植物体内のミネラル不足、窒素が過多の状態など。

 

太陽熱養生処理で使用する納豆菌、酵母菌について

納豆菌は食用のもの(保有株数が業界一多い・ミツカンがおすすめ)で良い、1パックを水に混ぜ、豆を取りだす。砂糖(白糖以外)と豆乳を入れ、エアレーションしながら30℃まで温め、12時間後に使用する。

酵母菌は、食用のイースト菌でよい。寒い時期に酵母を使用する場合は、2-3℃でも活動できる白神こだま酵母を使用する。水に砂糖(白糖以外)とイースト菌を入れ、良くかき混ぜ、密閉容器で培養し、24時間後に使用する。

 

2019年8月に太陽熱養生処理を行った。土壌分析を実施せず。
作土層(植物が根を伸ばせる土の層)の深さ
 A畝処理前10cm→処理後50cm

カブ、ダイコン、ルッコラ、ビーツ、リーフチコリ植付。生育順調、虫の付きやすいアブラナ科でも無農薬で虫がつかない。雑草は生えない。
 B畝処理前20cm→処理後35cm

人参、ダイコン植付。半分ほど生育不良、成長が止まる。それ以外は順調。雑草が生える。

 

今回の研修に参加してB畝が不良になった原因は、養生処理中の水分量が少なかったため、表層へ塩類が集積し、生育障害が発生したと考えられる。あとは堆肥の施肥量が少なかったことため、土が硬くなってしまった。